便意について本気出して考えてみた3(著:深山)



第三ラウンド

もちろん、次の休み時間は彼女の話で持ちきりだった。
一つの失敗でここまで人は他人を侮蔑することが出来るものなのか。

僕の心は複雑だった。

一歩間違えば、僕も彼女と同じ状況に陥っていた。
そんな状況で僕は彼女を本気で侮蔑することは出来なかった。

しかし、そんな僕の心とは関係なくみんなは面白おかしく彼女を笑いものに、ピエロにしている。
そして、その一人が僕にも話しかける。
「あいつって最悪だよな。」
僕は少しそいつを睨んでやる。

けど、ここで違うと言えば彼らは僕までもいじめるだろう。
何せ彼らは自分と違うものを受け入れないのだから。
僕は仕方なく、後悔しながら頷く。

「そうだね。」

チャイムが鳴った頃にはみんな彼女の敵になっていた。
そして、彼女の、獲物の帰りを待っていた。

扉が開き、先生と彼女が入ってくる。
みんなは遠慮なしに彼女に視線をぶつける。
先生は彼女に席に戻るように告げる。
それから、黒板に唐突に、ホントに唐突に文字を書き出した。


「便意」


その言葉とは裏腹に先生の顔は真剣そのものだった。
「今日はこれについ真剣に考えてもらおうと思う。」

クラス中に笑いとざわめきが拡がっていく。
しかし、先生は気にすることなく続ける。
「それぞれ班になって、自分の便意の体験について話し合ってほしい。二十分経ったら、それぞれの班ごとに発表してほしい。」
先生はそう言うと椅子に座り、みんなの顔を見ている。
その顔は怒っているようにも、悲しんでいるようにも見えた。

一瞬の静寂の後、みんなは机を移動させ一応議論できる状態までは持っていった。
しかし、話す内容がない。
先生は彼女に対する偏見を無くすためにこのような手段を取ったのだろうが、間違っている。
誰も話したくないのだ、自分の失敗談など。
下手に話すと今度は自分がいじめられる。

確かに対応は早かった。
しかし、内容がこれでは意味がない。


僕ならもっと上手く解決できる。


そのとき、一つの対応策が浮かぶ。
しかし、それはある意味自分の死を意味する。


しかし、やる価値はある。


そして、僕はそれに向けて準備を始めるのだった。


『急展開の4話へ』


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